ACW - NNNavi(エヌエヌナビ)第13回


コロナをきっかけに、働き方に関する様々な常識が覆りました(3密NG、リモートワークの利点、オンライン活用のメリット…)
これから働き方は、オフィスは、いったいどこに向かうのでしょうか?
ACWでは、そんな疑問に向き合い、ニューノーマル時代のよりよい働き方に関する考察、
提案、事例、ニュースをこちらの『NNナビ』にて配信していきます。是非ご覧ください!
第13回 働く時間と場所を選ぶ時代~『ABW』の価値、オフィスの意味 を考える 2020/9/16


 はたナビPROニューノーマル版を先週リリースしました。さて、ニューノーマル時代にふさわしい働き方と言われる『ABW』って何なのでしょうか? 今週は、『ABW』の価値、課題、オフィスの意味、そして実現するために を考えます。



  • NNナビのバックナンバーはこちら

  • 1.ABWとは?

    「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略。
    「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと


    <解説>
     ABWは元々オランダから始まったワークスタイルで、グローバル企業で採用するケースが増えています。 ノートパソコンなどのモバイルツールを駆使しながら、働く人がいまやるべき仕事に対して、いつ・どの場所でやるのが最も効率がいいかを自分で決めることができます。
     日本にも場所を選べる働き方として「フリーアドレス」という概念がありますが、固定席をもたずに、モバイルツールを活用して自分の好きな席で働けるオフィスに限ったスタイルのことです。
     ABWの場合は、オフィスの内外を問わず働く時間を自由に選べるので、時間をかけてオフィスに行かずとも、自宅やカフェなどを働く場所にすることができます。 (コクヨ(株)HP働き方用語辞典より引用)


    2.ABWの価値は?



    <会社にとって>

    ●多様な人材を確保しやすい
     人にはそれぞれ個々の事情(子供や配偶者、高齢者・・・)やスタイル(働き方、生き方・・・)があります。毎日決まった時間に決まった場所に通勤することは、これらになかなか応えることができません。特に少子高齢化が進み、グローバル化が進む世の中では、多種多様な人が働きやすい働き方、『ABW』がふさわしいと言えます。

    ●コスト削減できる
     在宅ワークのウエイトが増えれば、オフィスへの出社率や出社基準などに応じた、機能の集約や分散、ファシリティ面積の見直しが発生すると考えられます。ファシリティや運用のコスト削減が期待できます。 そこから、在宅ワーク環境整備のための支援に回すことができます。

    ●事業継続(BCP)
     分散して働いているため、仮にセンターオフィスが被害にあっても事業継続しやすいメリットがあります。ABW導入時にあえてオフィスを分散化させるケースもあります。

    <ワーカーにとって>

     総じて自律性の高いワーカーの満足度は向上します。ただし入社歴の浅い人、仕事の内容が変わった人などに対してはマネージャーやチームメンバーがケアする必要があります。

    ●時間の有効活用
     最も大きいのは通勤時間の削減です。通勤時間を家庭の時間、自己実現や健康、趣味の時間、場合によってはセカンドワークの時間に変えることができます。

    ●生活と仕事の両立、健康意識の向上も
     下記アンケートの回答では、家族やパートナーと過ごす時間が充実するようになったと回答した方が42%になりました。また、健康意識の高まりも見ることができます。 今まで、配偶者の転勤、親の介護、子供の教育など様々な生活面での都合で、仕事を諦めざるを得なかったことが緩和されます。生活や家庭を維持しながら働くことができるようになります。



    ポストコロナに向けた働き方の変化アンケート(対象:在宅勤務者2020年5月コクヨ(株))より


    ●生産性の向上は賛否が・・・
     在宅ワークやオンライン会議での生産性向上の効果が出ています。「仕事に集中でき、効率があがった」、「会議が効率的に進み、答えが早く出た」などなど。ただし環境や立場によっては、「家族やペットが気になって仕事にならない」、「立て続けに会議が入りストレスが上がる」など、必ずしも生産性が向上する訳ではありません。 また、日常的な声掛けやアドバイスが無くなり、人の成長を阻害するという声もあります。生産性向上については、プラス面、マイナス面の両面抱えていると考えられます。

    ●高い自律性、個性の尊重
     ABWでは常に誰かに見られ、指示される訳では無いので、ワーカー一人ひとりに高い自律性が求められます。また、時間と場所を超えて多種多様な人と人の繋がりが生れ、個性が尊重されるようになります。

    <社会にとって>

     実はABWの価値は、社会にとって非常に大きいものだと考えています。

    ●地域の活性化(都市集中回避)
     ABWでは、都心のオフィスに多くのワーカーが出社する必要はありません。今後オフィスは分散化、サテライトオフィスなど地域にオフィスの拠点ができることも期待されています。またワーケーション(休暇を兼ねた働き方でリフレッシュ)が広がれば、地域産業の活性化にもつながり、地域での雇用も生まれます。

    ●グローバル化
     働き方に時間と場の制約が無くなれば、日本国内、日本時間であることは必然ではありません。多様な人材の交流が生まれ、グローバル化が進みます。

    ●少子高齢化対応など、ライフスタイルの多様化
     配偶者の転勤、親の介護、子供の教育、自身の健康・病気など様々な課題もABWで前向きに対処することができます。また、健康意識の向上により、総医療費を抑制することができるかもしれません。ライフとワークのバランスのどこかで諦めていたことが、共に実現できるようになっていきます。

    3.ABWの課題は?
     ABWの課題には、マネジメントスタイル、どこでも働ける環境の整備、そもそも業務特性に合わないなどがあげられます。


    アフターコロナに向けたオフィスに関するアンケート(東京エリア109社の声2020年6月コクヨマーケティング(株))より


    ●マネジメント上表①参照)
     ABWで最も苦労する課題の上位は、マネジメントと言われています。「成果・評価がわかりづらい」、「マネジメント・部下の労務管理が難しい」といった声が多数聞かれます。 日々部下を見て、「ああしろこうしろ」、「これダメ、あれダメ」と指示していたスタイルは通用しません。部下は目の前にいないので、マネジメントスタイルを根本的に変える事が求められます。一言でいうと、部下を信頼し、ゴールや当面の成果を明確に示し、そのプロセスを支援リードするスタイルが求められます。マネジメント型からコーチング型へと変化します。 また、業務の内容や人によっては、ABWが本当にふさわしいのか、検討する必要があります。

    ●どこでも働ける環境の整備上表②参照)
     ネットワークがスムーズにつながること、PCとスマホは必須アイテムとなります。ただこれだけでは十分といえません。ネットワークや情報機器の安全性確保(セキュリティ)、印刷問題、はんこ問題、在宅ワークの環境格差など課題は多く、ツールさえ用意すれば大丈夫という訳ではありません。 ハード面&ソフト面の整備、運用ルールや制度の見直しなど段階的にでも進める必要があります。

    4.ABWにおけるオフィスの意味は?

     ABWが進むと会社=オフィスにワーカーは何をしにくるのでしょうか?
    以下のアンケート結果(各空間で快適に行える活動は?)では、自宅では一人での活動が上位であるのに対し、オフィスでは雑談、面談・相談、情報共有などオンライン会議では難しいコミュニケーションが多数みられます。



    ポストコロナに向けた働き方の変化アンケート(対象:在宅勤務者2020年5月コクヨ(株))より


     また、下記アンケート結果(「会社」、「外出先」、「自宅」それぞれの仕事を行う場の比率は?)では、週1日以上在宅勤務を希望する人が80.1%、週3日以上の人も25.4%いました。会社(オフィス)への出勤は46%で概ね週2日の出勤となりました。 オフィスの意味を改めて問い直し、再構築する必要があります。
     ・日々の声掛けによる、人の教育・育成や評価
     ・インフォーマルや肌で感じるコミュニケーション
     ・特別な機器・装置やモノ、人を活用すること
     ・チーム力や組織風土、社会を感じること・・・などなど
    皆さん、お客様と一緒に考えていきましょう。



    ポストコロナに向けた働き方の変化アンケート(対象:在宅勤務者2020年5月コクヨ(株))より


    5.ABWを実現するために


      ABWを実現するためには、どのようにすればよいのでしょうか?
    働くスタイルが大きく変化しますので、経営者が明確にビジョンを示すことや、在宅ワークのネットワーク等環境面の整備、労務管理など制度面を見直すことはもちろん重要です。 さらに、ワーカーの声を吸いあげ、ワーカー参加型での見直しを進めることは、ABWの価値を高め定着させるためにも重要になります。

    ●ワーカー意識調査「はたナビPRO ニューノーマル版」



     ワーカーの意識調査は極めて重要です。実施前、実施開始後、その後も定期的に実施されることをお勧めします。どのワーカータイプにどのような課題があり、どのように変化しているかを見えるかすることで、対策しやすくなります。

    ●「場」×「ツール・IT」×「運用ルール」の視点(3要素)



     IT機器の「ツール・IT」を用意しただけでABWが上手く進むわけではありません。使い方ルールづくりやリテラシー向上支援、Q&A、セキュリティなどサポート面の「運用ルール」づくりが重要です。またIT機器を利用する「場」の環境整備はとても重要です。椅子問題、音問題、スペース問題、室内環境問題などなど

     ACW事務局では、「場」×「ツール・IT」×「運用ルール」の視点で解決策を順次ご紹介していく予定です。これからもご期待ください。

     これからも様々な情報をお届けしたいと思います。
    会員様からのお声もお待ちしておりますので、ぜひ下のアンケートからご意見・ご感想をお寄せください。
    ありがとうございました。

    NNナビのバックナンバーはこちら